2012-06-21 Thu
今年2月に最愛の夫である北井ジィを亡くした北井バァ...週2日ほど『かんむら』でお泊りしながら自宅ですごしている。
彼女は、ジィの死をまだ受け入れられないでいる。
ひょっとするとこの先、受け入れることはないかもしれない。
これまで、ジィの面倒を看ることだけに生きがいを感じてきた...。
最愛の人を失ったショックは計り知れない...。
あれ以来だいぶ衰えが見え、関わる者たちはみな寂しさを感じている。
しかし、それも北井バァのあるがまま...。
そんな彼女をなんとなく受け容れながら、のんびり関わってゆきたいと思う。
北井バァのお泊り...

ジィの葬儀の時、祭壇に上がっていた日本酒「七賢」を愛飲している。
「おジイちゃん、好きなのよねぇ~...」としみじみと...。
彼女の中では、確かにジィは生きている。
ジィが家の玄関で待っているのだという...。
だからこそ、「早く帰らなければ...」そんなことばかり言う。
スタッフは、息子の卓チャンがジィを看ているから大丈夫だと彼女に伝える。
でも当然、誰だってそんな話を信じられるはずがない。
だからスタッフの一人が卓ちゃんになりすましてバァと電話で話をする。
ひとしきり話すとやっと落ち着いて、「ここに泊まる」という覚悟を決める。
毎回、こんな繰り返しである...。
誰だって自分の家が良いに決まっている。
そこに最愛の人が待っていると思えればなおさらだ。
そしてあの家は、自分で土地を決め、一人ですべてを段取って築いた。
その家で半世紀に渡り家事を切り盛りし、子供たちを立派に育てた。
いまでも彼女の心の中では、家には最愛の家族が集っている...。
そんなあたたかい「家」に帰りたいのはあたりまえだ。
『かんむら』がその家と同じようになれるわけがない...。
でも、スタッフもひっくるめた『かんむら』が、彼女にとってもうひとつの居場所となれればいいなぁと思う。
老いに寄り添い、その速度と同じようにゆっくりと時間をかけて...。
いつもスタッフ頼みで申し訳ないけど、みんな...よろしくね...
